月経困難症保険適応 ミレーナ |
*一般的に子宮筋腫摘出術をされている方は、当院ではミレーナ装着は一般的にできません。その手術を受けた病院でミレーナ装着をご相談ください。
*子宮外妊娠の既往のある方、授乳中の方、心臓弁膜症合併の方は、当院ではミレーナ装着はできません。
ミレーナとは、避妊リングとピルが合体したようなものです。
ミレーナとは、レボノルゲストレルという合成黄体ホルモンを子宮内に直接放出する子宮内避妊システム(IUS)です。薬が直接子宮に働くので、内服のピルに比べると副作用が極めて低いです。 ピル内服が気分不良により不可能でも、ミレーナは装着可能なことが多いです。また、喫煙者であるためピル内服が出来ない場合でも、ミレーナは装着が可能です。 (禁煙が望ましいことにかわりません。)
経口避妊剤同等以上の避妊効果を持つとされ、1回の装着で最長5年間の有効性を保持します。(ミレーナはきわめて避妊効果は高いですが、他の避妊法と同様に100%ではありませんので、ご留意願います。)
通常の避妊リング(IUD)では装着すると月経量が増えるという短所がありましたが、ミレーナは月経困難症(生理痛)や過多月経の症状緩和に非常に有効です。上の図のように子宮内膜を薄く保ちます。
装着後数ヶ月間(約3ヶ月)は月経時期以外に出血が続くことがありますが、 通常は日数の経過と共に消失します。
ミレーナは、自費での避妊薬として本邦厚生労働省で承認されてきましたが、平成26年9月2日より過多月経、同年11月18日より月経困難症の治療薬として厚生労働省承認健康保険の適用となりました。
ミレーナの注意として、「子宮外妊娠の既往歴がある女性には投与しないこと。未経産婦には第一選択の避妊法としないこと。器質性過多月経の患者では、原疾患の治療を優先すること。子宮内膜症性卵巣のう胞は、頻度は低いものの自然経過において悪性化を示唆する報告があるので、画像診断や腫瘍マーカー等の検査も行うこと。」とされています。
現在授乳中の方は、授乳期間が終わってから、ミレーナ挿入をお願いします。
当院では、血栓症や子宮外妊娠の経験がある方、子宮頸がんや子宮体部がん、乳がんの既往のある方は、ミレーナの装着は行っていません。
最近、20歳代前半の方からミレーナの希望を多くお問い合わせがあります。特に妊娠経験がない若年者の方は、まず低容量ピルを始められて、それがあわなければ、ミレーナを検討するようにお願いします。逆に40歳以上の方で、初めて低容量ピルを内服希望するという場合は、血栓症の副反応の面を考えて、ジエノゲスト0.5またはミレーナを第一に検討することもベターかと思います。また、授乳中でも可能なミレーナはありますかという問い合わせもありますが、当院では授乳中に可能なミレーナの取扱いはありません。
ミレーナの保険適用にての装着は、生理痛や過多月経でお困りである、50歳までの方が対象です。成人年齢が18歳に引き下げられましたが、症例が重ねられ18歳でのミレーナ装着が一般的になる時まで、当院では20歳以上の方をミレーナの対象とします。なるべく保険適用で行っていますが、避妊目的でのミレーナの装着は自費になります。いままで避妊用のピルを内服されてきた方で生理痛や過多月経治療目的でミレーナ希望の方は、まずジエノゲスト0.5(ディナゲスト0.5)をおすすめします。ジエノゲスト0.5は、ミレーナ同様に黄体ホルモンのみであり、ミレーナと同様に血栓症などの副作用がほとんどありません。
また、他院で避妊用の自費の低用量ピルを処方されていて、ミレーナ希望で受診される方が数多くおられます。また、生理痛緩和目的であるが、自費の避妊用ピルを飲まれている方もおられます。他院で避妊用の自費の低用量ピルを処方されていて、そのまま当院でミレーナを保険適用での装着希望の場合は、避妊用の低用量ピルは実は生理痛や過多月経治療目的である旨の紹介状をできれば交付してもらうようにお願いします。(紹介状が得られない場合は、避妊用の低用量ピルは、生理痛緩和目的で内服していると当院受診時に自己申請ください。)
また、保険診療でミレーナを挿入され、その後更年期症状が出てきた場合は、ミレーナ挿入中の期間は、残念ながら原則としてホルモン補充療法、プラセンタ療法が保険適応されません。ミレーナを抜去してからの更年期治療となります。
ミレーナの挿入には、事前の診察検査が必要です。保険証を忘れずにお持ちください。
授乳中の方、子宮外妊娠既往歴のある方はミレーナの装着はできません。分娩後36週間までにミレーナ装着の場合は子宮穿孔リスクの上昇するとされており、当院では分娩後36週間経過してから、かつ授乳が終わってからのミレーナ装着になります。帝王切開術後の方は、帝王切開後1年経過してからの装着をお願いします。
事前検査は、超音波検査、子宮体がん検診やおりものばい菌検査などを行います。これらの検査は、月経中はできません。目安として、3割負担の方で、約6千円(初再診料別途)です。子宮体がん検診は、器具を子宮内に挿入しますので、ミレーナが挿入できるかどうかを確認することとにもなります。なお、ミレーナ装着後は、子宮体がん検診実施は非常に困難になります。当院でミレーナの装着する場合は、装着前の諸検査は他院で以前にされていても再度当院で行います。
子宮頸がん検診はミレーナ装着してもできますが、最近受けていない方は、事前に検査が必要です。子宮体がんと子宮頸がんの検査を同日に行うことは保険ではできません。別日で行えばそれぞれ保険でもできます。通常は、初回診察時に超音波検査、子宮頸部がん検診やおりものばい菌検査(3割負担の方で、約6千円(初再診料別途))→その結果の再診時に子宮体部がん検診(3割負担で再診料含めて2千円ほど)→検査になにか異常があれば治療してから、ミレーナ装着という流れになります。(子宮頸部がん検診は、とくに申し出のない限り大阪市の検診ではなく保険でおこないます。)
ミレーナ装着には、事前検査およびその結果の再診の受診が必要です。もし、検査で異常があれば、その治療後にミレーナ装着になります。
ミレーナは、月経の終わった直後、または月経の終わりごろに装着になります。月経開始後7日以内での装着が必要です。月経開始から10日近くたってからのタイミングでは装着できません。ミレーナ装着のタイミング期間は、月にわずか1週間しかありませんので、その時がクリニックの休診日であったり、お仕事等で受診ができない場合には、ミレーナ装着は次の月経周期のタイミングになります。
ミレーナの交換は、そういったタイミング時期はなく、いつでも可能ですが、交換前の事前検査として、超音波検査、子宮頚がん検診やおりものばい菌検査など(3割負担の方で約4,510円、初再診料は別途)を行います。他院や職場検診にて子宮がん検診をミレーナ交換前、目安としては半年以内に行っていれば、結果をお持ちください。交換前検査が異常なければ、次回ミレーナ交換になります。交換の際には、あわせて子宮体がん検診も行います。
ミレーナ抜去のみ希望で、ミレーナ装着後も月経が止まっていない方で、ミレーナ抜去後妊娠を望まない方は、ミレーナ除去前の1週間以内の性交渉に対してミレーナの避妊効果がなくなるので、月経中での抜去が必要です。
ミレーナ初回挿入の費用は、保険の場合は3割負担の方で、約1万1千円(初再診料別途)です。抜去の場合は、保険3割負担で抜去手技料約500円と超音波検査代約1,600円及び保険の初再診料(約380~1,010円)がかかります。
保険でミレーナ装着後に自然脱落の場合、一度だけ保険で翌月以降にミレーナの再装着ができます。
ミレーナ装着時に麻酔をかけて欲しいと相談されることがありますが、当院ではミレーナ装着時の麻酔の対応はできかねます。麻酔をかけてでのミレーナ装着希望の方は、対応可能な病院を受診してください。
PMS症状にてミレーナを希望される場合がありますが、厚労省の保険適用は月経困難症(生理痛)や過多月経であり、PMSの保険適用はされていません。ミレーナにて副次的効果で、PMS症状が改善される方もおられますが、逆に悪化する場合もあります。
重度の糖尿病や重度の高血圧の方は、ミレーナは添付文書上は禁忌になってはいませんが、内科の先生から当院でミレーナを装着しても問題ないという紹介状をもらってきて来てください。
重度の片頭痛持ちの方は、ミレーナは添付文書上は禁忌になってはいませんが、当院では悪化時の対応ができませんので、脳神経外科も備わっているような病院の婦人科での装着をおすすめします。希望があれば、高次病院を紹介します。